女性の人生最大のイベントとも言える出産を乗り越え、赤ちゃんと自分の1ヶ月検診を迎えてホッとしたのもつかの間…入浴時の排水溝を見てあまりの抜け毛の多さに気が遠くなるようなショックを受けた!
実はこれ、出産をきっかけに約7割もの女性に発症の可能性があると言われている「分娩後(産後)脱毛症」の経験談の一例なんです。
親や友人などの出産経験者に相談しても「一時的なものだから気にしないほうがいいよ、全然減ってるように見えないよ」となぐさめられるだけでなにも解決しない!という切ないお話もよく耳にします。
でも安心してください。分娩後脱毛症は多くの女性が経験する反面、時間の経過にともない多くの場合自然に治る脱毛症なんです!
とはいえ場合によっては分娩後脱毛症がきっかけで円形脱毛症やびまん性脱毛症に移行する可能性も少ないですがあるのも事実。
抜け毛の進行を防ぐためにも分娩後脱毛症の特徴や症状、原因について正しく理解を深めていきましょう。
産後の女性の半数以上が経験?分娩後(産後)脱毛症とは?
分娩後脱毛症とは女性特有で出産後に起こる抜け毛のことです。
雑誌のアンケートなどでは、出産後の4割から7割もの女性に抜け毛や髪が細くなるなどの症状がみられたそうです。
医学的には「分娩後脱毛症」と呼ばれていますが、一般的には「産後脱毛症」や「産後の抜け毛」で知られており、一過性の症状であることから病気ではないため多くの場合医療機関での治療をすることはまずありません。
これには産後多くの女性が母乳育児をすることから、投薬治療が敬遠されがちという理由や育児に忙しく医療機関の受診がままならないといった理由も大きいです。
なかなか人に相談する時間もなく、分娩後脱毛症がどういうものかわからないという女性のために、分娩後脱毛症の特徴を以下にまとめてみました。
(脱毛症状には個人差が大きいため、これらの特徴はすべての分娩後脱毛症に当てはまるわけではないことをご承知ください)
分娩後脱毛症の特徴まとめ
- 産後2ヶ月~3ヶ月の間に抜け毛が気になり始める
- 排水溝が詰まるほどの大量の抜け毛がある
- 大量の抜け毛の時期が3ヶ月程度続く
分娩後脱毛症の症状とは?
前述の分娩後脱毛症の特徴に当てはまる部分はありましたか?ここからはさらに具体的に分娩後脱毛症の症状を見ていきましょう。
- 頭部全体の髪が抜ける
- 円形脱毛症のような脱毛斑はみられない
- 朝起きた時、枕に抜け毛が目立つ
- シャンプーやドライヤーの際、大量の抜け毛が見られる
- 髪のパサつき(乾燥)がみられる
- 髪が細くなる
分娩後脱毛症には上記のような症状がよく見られ、「抜け毛が増えた」という実感を持つ方が多いようです。
自然のサイクルで抜け落ちる髪の毛は1日平均50~100本(季節によって変動し、夏場は多いと言われています)程度で、ハリやコシがあり健康的な状態の髪の毛が抜けるのが特徴です。
しかし分娩後脱毛症の場合、1日で200本から400本ほど抜ける場合もあるといいます。
ただし特定の部位の脱毛斑ができたりつむじや分け目が目立つことはありません。
そのため分娩後脱毛症は他人から薄毛を指摘されるようなことはあまりなく、外見で薄毛を実感するよりも入浴時に排水溝にたまった大量の抜け毛を目にすることなどで自覚する場合が多いようです。
髪の質の変化(乾燥や細くなること)は産後に髪のお手入れの時間をかけられないことや、母乳育児による母体の栄養不足なども関係しているため、分娩後の女性の中でも特にロングヘアの方に症状が出やすい傾向があります。
分娩後脱毛症の原因は?
分娩後脱毛症は他の脱毛症に比べると原因がはっきりしていてメカニズムも確立しています。
髪の毛には毛穴(毛根)から生え、成長が終わると自然に抜けまた生えるというヘアサイクル(毛周期)があります。このサイクルは通常3~6年周期でくりかえされていて「成長期」「退行期」「休止期」という時期に分けられます。
成長期には毛母細胞が細胞分裂をくりかえすことで髪が成長しますが、その活動を支えているのが血液で運ばれる栄養と、女性ホルモンのエストロゲンです。
エストロゲンは通常(非妊娠時)は毎月生理後から排卵にかけて分泌が増加し、排卵後から生理開始にかけて分泌が減少する仕組みになっています。
この仕組みにより毛母細胞に供給されるエストロゲンが減少することで、成長期を終える段階の髪は成長をやめて退行期に入るのです。
しかし妊娠をきっかけにエストロゲンの分泌は増え続け、出産まで減少することはありません。そのため通常時であればエストロゲンの減少により自然に抜けるはずの髪も妊娠中は成長を続け、退行期や休止期に移行しないため抜け毛が減ります。
出産を終えるとエストロゲン分泌量は一気に通常以下にまで減少し、分泌が通常に戻るまでには約6~8週間かかります。この出産後のエストロゲン分泌量の少ない期間に、妊娠中に本来抜けるべきだった髪が一気に抜け落ちていくのです。
つまり分娩後脱毛症の原因は「妊娠時に増えた女性ホルモンが出産により通常量に戻るため、女性ホルモンによって維持されていた自然に抜けるはずの髪が抜け落ちる」ことだと言えます。
分娩後脱毛症の原因とメカニズムがわかったことでホッとされた方も多いのではないでしょうか?冒頭で触れた「一時的なものだから気にしないほうがいいよ」というアドバイスが的を得ていたことがわかりますね。
出産の年齢や回数と抜け毛の量が比例するってホント?
「2人目(3人目)の方が抜け毛がひどかった」「高齢出産は抜け毛がひどいらしい」という出産後の抜け毛にまつわる噂を耳にすることがありますが、出産の年齢や回数と抜け毛の量には関係があるのでしょうか?
実はこの「出産の年齢や回数と抜け毛の量が比例する」という噂に医学的根拠はありません。
高齢出産と若い年齢での出産を比べても、妊娠中大量分泌されていたエストロゲンが出産後に激減するという女性ホルモンの増減のメカニズムに違いはなく、産後の抜け毛量と出産年齢に関連はないと言えます。
同様に、出産回数を重ねることが原因でエストロゲンの分泌量が減るというデータもなく、出産回数に関係なくエストロゲンは分泌されます。
ただし、年齢が上がるとエストロゲンの分泌量自体が減少するため、若年齢の頃と比べて「髪が生えるのが遅い」「髪のハリやコシが減っている」と感じられやすいのは事実でしょう。それが高年齢出産後の抜け毛が多いと感じられる原因なのかもしれませんね。
また出産回数が多いと抜け毛が増えることに医学的根拠がないにもかかわらず、実感する方が多いのには以下の理由があります。
順を追ってくわしく見ていきましょう。
⒈ 出産の間隔が短いとストレスが多い
脱毛症や頭皮のトラブルの原因に必ずと言っていいほど挙げられるのがストレスです。そして育児はどうしてもストレスがかかってしまうものなのです。
親にとって子供は無条件に愛を注げるとても大切な存在です。しかし、夜泣き、こぼす、こわす、イヤイヤ期、トイレ問題…ストレスの種は挙げればきりがありません。これが連続して起こると思うだけで、ストレスが増えることがわかりますよね。
⒉ 加齢によるホルモンバランスの乱れ
当然のことながら、1人目よりも2人目の出産の方が年齢が上がるため、産後の回復に時間がかかります。
出産により大きく変動したホルモンバランスの回復に時間がかかることに加え、年齢が上がったことによる女性ホルモンの減少もあり、出産回数が増えるたびにホルモンバランスの乱れが出やすいと言えるのです。
⒊ 育児疲れによる頭皮環境の悪化
子供同士の年齢が離れていれば1人目のお子さんに赤ちゃんのお世話を手伝ってもらうこともできるかもしれませんが、多くの場合お母さん1人で子供全員の育児を行うためかなりの疲労が溜まってきます。
自分の食事や入浴もままならないような状態も珍しくはなく、睡眠時間が不足するのはもはや当然のことでしょう。そんな状態では栄養不足と汚れの付着で頭皮環境が悪化するのも無理はありません。
いかがでしょうか?出産回数と抜け毛の量に医学的根拠はないとはいうものの、無関係ではないことがお分かりいただけたと思います。
ただし個人差が大きく「出産を1度経験して勝手がわかっているから2度目はストレスがほとんどなくて抜け毛もあまり感じなかった」という方も多く、「出産回数を重ねると必ず抜け毛が増える」というわけではありません。
まとめ
いかがでしたか?出産経験のある女性の約半数から7割の方が経験するという「分娩後脱毛症」正しい原因とメカニズムを知って安心された方も多いのではないでしょうか?
それでもやはり実際に髪が抜けるのを目にすると精神的につらいですよね?「このまま髪が抜け続けたらどうしよう…」「抜け毛を減らすために何かできることはないの?」という不安な気持ち、よくわかります。
抜け毛の予防や髪にいい生活習慣を別記事にまとめていますので是非ご覧ください。
銀座・六本木の美容クリニックで10年以上ナースとして働いた経験を生かし、美容医療とコスメの実際とお悩み別おすすめ美容テクニックをご紹介します。